超心理学

2012年11月20日 (火)

超心理学4~霊魂仮説

 石川幹人著『超心理学-封印された超常現象の科学』の第10章は「霊魂仮説について考える」となっています。

 そこで、大学の市民講座で超能力を取り上げた際、ある受講生から「霊魂ではダメなのか」と詰め寄られた、というエピソードが紹介されています。

 これに対する石川さんの回答は「霊魂の仕業にすると、なんでも説明できてかえってダメなんです。万能な仮説は、予測力がなく科学的に役に立たないのです」というものです。

 一瞬、確かにそうだなと思いました。しかし本当にそうなのでしょうか?

 続けて書かれてる内容を抜粋してみます。
 「まず、霊魂とはどんなものか判明していない」
 「はじめに霊魂の性質を明らかにしておかねばならない」
 「霊魂や幽霊が物の世界といかにかかわるかが明示されることが特に重要だ」
 「幽霊が「見る」とはどういうことかが語られてないと意味がない」

 うーん、これはどうでしょう?霊魂仮説に対してそうおっしゃいますが、超能力の方もほぼ同様ではないでしょうか。工学博士に逆らう知識も能力も持ち合わせてはいませんが、主流の科学者が超心理学にだけやたらと高いハードルを設定しているのと同様のことを、ここでしてしまっていないでしょうか。本書は「超心理学の封印」がテーマですが、超心理学が「霊魂仮説」を封印しようとしているようにも見えます。

 スピリチュアリズムの側から言えば、霊魂や死後存続を証明する事例をどんなに示しても、ESP(超感覚的知覚)仮説を持ち出されると(ほとんど)すべて説明できてしまいます。つまりこちらもまた「万能な仮説」と言えるのではないでしょうか。

 石川さん監修(日本語訳)によるステイシー・ホーン著『超常現象を科学にした男-J.Bラインの挑戦』では、超心理学の創始者ラインの奮闘ぶりが描かれています。彼を寄付金などで支援する人たちは彼の研究に霊や死後生の存在証明を期待していました。彼自身もまた本当の動機はそこにあったようでした。しかし一方で彼の当面の最大の目標は超心理学を科学として認めさせることでした。そしてその具体的な形が彼の設立した超心理学協会を権威ある米国科学振興協会のメンバーとして受け入れてもらうことでした。そのために彼の研究は霊や能力者などの扱いにくい(しかも科学者から蔑まれる)存在から遠ざかっていきます。そして彼の晩年の1969年に、何と4回目の挑戦にして、超心理学協会は米国科学振興協会への加入が認められます。

 しかし、その後はどうでしょう?それでラインの真の目標は達成されたのでしょうか。答えはもちろん否定的なものとなります。だからこそ、それから40年以上が過ぎた現代でもなお「封印された超常現象の科学」と言わざるを得ないわけです。

 つまり、私が言いたいのは、「科学」に認められるために霊魂や死後存続を退けてみても結果は一緒じゃないか、ということです。それならば霊魂仮説だけを封印するのではなく、それも含めた研究をしてほしいなあというのが私の願いです。

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2012年11月13日 (火)

超心理学3~「ヒツジ・ヤギ効果」

 またまた石川幹人著『超心理学-封印された超常現象の科学』からの紹介です。

 超心理実験において「ヒツジ・ヤギ効果」というものがあるそうです。超心理実験の得点が、超心理現象を信じる者(=ヒツジ)が被験者のときは高く、超心理現象を信じない者(=ヤギ)が被験者のときは低いという現象のことです。

 こう聞くと、信奉者(ヒツジ)が被験者となっている実験ではインチキが行われ、否定論者(ヤギ)がかかわったらインチキができないだけじゃないかと思う向きもあるでしょう。

 しかし、この効果は厳密な実験のもとで検証され、多くの追試でも確認されているようです。しかも、ヒツジが偶然より高いレベルの得点をあげるだけではなく、ヤギが偶然を下回る悪い結果を出しているというのも興味深い点です。これについて超心理学者は、ヒツジもヤギも無意識のうちにESPを発揮して、それぞれの信念に適合する方向での結果を出しているという説明をしています。

 もっとやっかいなのは「実験者効果」です。被験者だけではなく、その実験を主宰する実験者の信念も実験結果に影響を与えているらしいというのです。そしてこちらもその効果を示す実験結果が出ているようです。

 これは否定的懐疑論者からは「やっぱりインチキだ」とたたかれやすいとは思いますが、地道に実験結果で実証していくしかないのでしょうね。

 それはともかく、心霊研究の歴史を学び、スピリチュアリズムについての体験をしてきた者にとっては、こういう現象は大いに思い当たるところがあります。

 立花隆さんはその著書『臨死体験』において、「ウィリアム・ジェームズの法則」というものを紹介されていました。ウィリアム・ジェームズは、近代スピリチュアリズム草創期に、SPR(心霊研究協会)を舞台に活躍したアメリカの心理学者・哲学者です。超常現象の研究には「信じたい人には信じるに十分な証拠が出る一方、信じたくない人には否定するに十分な曖昧さが残る」という現象を指すようです。

 心霊研究の初期に、すぐれた霊媒を相手に実験をしても、否定論者が関与するといい結果が出ないということも多々あったようです。あと一歩で否定論者も否定できないような結果が出せるというときになぜか行き詰ってしまうという展開が見られました。

 これらについてはいろいろな解釈が可能でしょうが、上で紹介した「ヒツジ・ヤギ効果」や「実験者効果」が関係しているのかもしれませんね。

 また、私自身、スピリチュアリズムにかかわるようになってから、多くのミディアム(霊媒)によるデモンストレーションやリーディングを体験してきましたが、そのミディアムの能力の発揮の仕方が、観衆や相談者などが抱く信念やミディアムへの信頼感などに大きく影響を受けるのをまざまざと見てきました。

 否定論者がどんなにインチキの証拠だと見なそうと、「ヒツジ・ヤギ効果」や「実験者効果」というのは確かにあるのではないかというのが私の実感です。そして、それが実感にとどまらず、厳密な実験と追試によって実証されてきているのはとても有意義なことだと思います。

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2012年11月 5日 (月)

超心理学2~能力者への仕打ち

 前回に引き続いて石川幹人著『超心理学-封印された超常現象の科学』からの紹介です。

 初期の心霊研究では霊媒が、超心理学では超能力者(本書では能力者と呼んでいます)が、科学者の実験対象となりました。超心理学の創始者と言ってもいいJ.B.ラインは、能力者を対象とする実験に早々に見切りをつけ、より再現性の高い一般の人たちを対象とする実験へと移って行ったと言われています。

 さて、その能力者の扱いです。本書ではまず、懐疑論の伝統的団体であるサイコップ(CSICOP)による、ロシア生まれの人体透視能力者ナターシャ・デムキナの実験が紹介されています。そこでのかなり失礼で人を追いつめるような扱いを見て、この実験を仲介した新聞記者は後悔したとのことです。ちなみに実験結果はかなり良かったのですが、サイコップは失敗と決めつけたようです。

 また、明治末期の日本の「千里眼」能力者、御船千鶴子の事例も紹介されています。千鶴子に対しては、東京帝国大学の心理学者、福来友吉さんが能力者の精神状態をよく理解し、適切な配慮をしていたようです。しかし周囲の無理解や手厳しい態度は、ナターシャの場合とよく似ていました。結局、千鶴子の服毒自殺(享年25歳)という結末を迎えます。(ちなみに福来友吉は後に大学を追われることになります)

 石川さんは、能力者に対する実験進行の典型的パターンを次のように描いておられます。
1 能力者だと騒がれる人が現れる。
2 厳密な実験が企画される。
3 不十分な実験結果に終わる。
4 批判者は能力を認めない。むしろ厳密な状況でできないことこそ、トリックがある証拠だと考える。
5 能力者および支持者たちは、実験のやり方を批判し、厳密な実験を嫌うようになる。

 随分前に、本ブログでデボラ・ブラム著『幽霊を捕まえようとした科学者たち』を紹介しました。これは、イギリスとアメリカのSPR(心霊研究協会)の草創期の物語です。私は、石川さんの描く典型的パターンを読んで、著しい既視感に襲われました。19世紀末から20世紀にかけての心霊研究における科学者と霊媒の関係にそっくりだったからです。

 私は、スピリチュアリズムと心霊研究の分離を残念に思っている人間のひとりです。能力者(この場合は霊媒)は、現代においてももっと科学の検証を受けるべきと偉そうに言ったこともあります。しかし、このような能力者に対する仕打ちを見ると、安易にそう言うわけにもいかないなと考え込んでしまいます。分離もやむを得なかったのかな・・・と。それでもスピリチュアリズムが科学性や合理性から遠ざかって行ってはいけないという思いは変わりませんが・・・。

 科学者も、ほかの場合には、実験対象に対して、もっと配慮に満ちた丁寧な対応をするのではないでしょうか。例えば、医学における治験患者への対応はどうでしょう。しかし、霊媒や超能力者に対しては、人権を無視したような対応ができてしまうのはなぜでしょう。

 そこには、どうせインチキで、相手はペテン師に決まっているというような思いがあるのではないでしょうか。ペテン師の人権に配慮する必要などないのだと・・・。

 おっと、またまた懐疑論者を装った「かたくなな否定論者」の問題に戻ってしまいましたね。

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2012年10月31日 (水)

超心理学1~かたくなな否定論者

 久しぶりにむさぼるように読んでしまう本に出会いました。石川幹人著『超心理学-封印された超常現象の科学』です。続けてステイシー・ホーン著『超常現象を科学にした男-J.B.ラインの挑戦』も読んでいます。こちらも面白いです。

 スピリチュアリズムと同時進行で発展した心霊研究、そしてその心霊研究から分化発展したのが超心理学というところでしょうか。残念ながら心霊研究とスピリチュアリズムはかなり早い段階で袂を分かってしまったように見えます。さらに超心理学になるとその距離が広がっていったようです。そのせいか、スピリチュアリズム側からは、心霊研究や超心理学に対して、非難がましい意見を聞くことも多いです。

 しかし、私は、彼らは感動するほどに誠実に懸命に科学的に研究をしてきた人たちだと思います。霊魂説や死後存続説とは一線を画そうとする姿勢が、スピリチュアリズム側から見れば受け入れられないのかもしれませんが、よくよく主張を読むと、霊魂説を決して否定しているのではなく、より科学的に検証可能な領域で勝負しようと苦心している様子がひしひしと伝わってきます。

 そして、それでも彼らは、一般の科学者からは白眼視され、ほとんど迫害に近いような仕打ちを受けています。その構図は19世紀に発展した心霊研究の時代から全く変わっていないように思います。

 著者の石川幹人さんは、工学博士で、明治大学情報コミュニケーション学部の学部長という地位にある方です。しかし、超心理学研究でその地位にいるはずもなく、超心理学は全くの手弁当でライフワークとして取り組んでおられるようです。本当に頭が下がります。

 石川さんは、もちろん超常現象の安易な信奉者のことは批判されていますが、それ以上に、研究の発展を阻害している存在として、懐疑論者を装った「かたくなな否定論者」をあげておられます。それは次のような誤った認識のうち、ひとつまたは複数をもっている者だそうです。

1 超心理学者はずさんな研究をしている
2 超心理学者はかたくなな肯定論者である
3 自然科学を基礎づける、現在の物理学の描く世界観は絶対に正しい

 うーん、確かにこういう人たちがいますね。昔も今も・・・。
 より具体的な説明は、是非、本書をお読みください。

 これに関連して、本書に、かの有名な天文学者カール・セーガン博士の言葉が引用されています。ちなみにカール・セーガン博士は懐疑論者です。

 「たしかに懐疑主義者はときどき高飛車になって、人を見下したような態度をとることがある。そういうケースは私も見聞きしているし、それどころか、今にして思えば我ながら愕然とするのだが、私自身ずいぶん不愉快な口のきき方をしたこともある。この問題は、どちらの側から見ても、人間の未熟さがほの見えてくるのだ。・・・熱心な懐疑主義者のなかには、この道具(科学的懐疑)を磨き上げずに、なまくらのまま使う連中がいるのだ。その結果、ともすれば「はじめに懐疑的な結論ありき」ということになる。証拠を調べたあとではなく、はじめから問題に取り合わないのだ。」

 「高飛車になって、人を見下したような態度」を取られるという経験は、スピリチュアリストや心霊研究者や超心理学者は嫌というほどしていると思うので、ありがたいお言葉ですよね。こういう誠実な文章というのは、立場の違いを超えて気持ちがいいものです。そして、超心理学をめぐっては、そういう誠実な人たちの苦闘のドラマが過去から現在にわたって続いているのだということを、本書を通じて知ることができました。

 少し得をした気分です。

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