天国と地獄

2010年10月25日 (月)

天国と地獄~アラン・カルデック『天国と地獄』を読んで

 以前の記事「こぼれ話~霊に関する迷信~アラン・カルデック『霊媒の書』より」に対して、JIJIROさんからコメントをいただきました。その中で、同じカルデックの『天国と地獄』(幸福の科学出版)を読むと「不安になってくることがありませんか?」との言葉がありました。

 その『天国と地獄』『天国と地獄Ⅱ』を読んでみました。シルバーバーチやインペレーター、マイヤーズからの通信は、いわば高次元からの通信であるのに対して、こちらは「あの世」に行って間もない普通の人たちからの通信で、とても貴重で、興味深いものだと思います。

 ただ、行って間もない霊たちだけに、物質界での価値観や文化の影響による偏りがあるような感じがしました。

 地獄で苦しんでいると思われる霊たちから、繰り返し「神による罰」という表現が出てくるのが気になりました。また、天国と地獄という2種類のあの世が存在するかのような描き方にも違和感を感じました。

 私が理解しているスピリチュアリズムでは「神による罰」という考え方はしません。あくまでも厳然とした因果の法則の結果であると考えます。地獄のような苦しみを味わうような精神状態を自ら作りだしてしまったから、そういう状態にいるにすぎません。それを当時のキリスト教文化出身の普通の人たちの霊は「神による罰」と表現しているだけのような気がします。
 
 また、これも私流の理解ですが、天国という世界は存在するけれど、「地獄界」なるものは存在しないと考えています(何をもって「存在する」と言うか次第なのですが・・・)。マイヤーズ霊が描く天国は、死直後の中間生のような世界である冥府や地上的記憶の世界である幻想界から色彩界、恒星界、火焔界、光明界、彼岸へとはるか高次元まで重層的に続きます(『不滅への道』)。しかし、これと並立するような形での「地獄界」なる世界は存在していないのです。あくまでも一時的(と言っても長期に及ぶ場合もあるようですが)に地獄的な状態というものがあるだけです。

 私たちは日常生活においても、理不尽な非難・中傷やひどい仕打ちを受けたとき、強烈な悔しさや怒りや憎しみを自分でもコントロールできず、のたうちまわって苦しんだり、一晩中眠ることができないというような状況に陥ることってあり得ますよね。私は、こういう状態が、あの世でも展開してしまうのが地獄というものではないかなあと思います。そして、そこから抜け出せるかどうかは、「この世」でも「あの世」でも自分次第です。

 マイヤーズ霊が描く天国の初期段階の「幻想界」とは、各自が物質界で過ごした生活と関連のある夢の期間などと説明されますが、地獄というのは、きっとこの「幻想界」のようなもののうち、少し質の悪い状態みたいなものではないでしょうか。しかし、死直後の霊からの通信では、あたかも天国と地獄という2種類の世界が同列に存在するかのように見えてしまうだけなのだと思います。

 決して、天国と地獄の2種類の行先があって、その人の誕生から死までの思考や言動の全てが誰かに採点されて、「はい、あなたは残念ながら合計したらマイナス点でしたので、地獄へ」などと判定されるようなものではないと思うのです。『天国と地獄』には、そういう誤解を与えかねないミスリーディングなところがあるように思います。

 『天国と地獄Ⅱ』の訳者まえがきでは、前作の感想として「地上での生活がこれほどまでに厳しく評価されることを知って、ちょっと怖くなった」という趣旨のものが多数寄せられたと書かれています。しかし、この種の恐怖心を与えてしまうことは、スピリチュアリズムやスピリティズムにとっては不本意だと思います。カルデックも「ちょっと編集上の配慮が足りなかったかな」と今頃反省しているかもしれません(笑)。

 恐怖心によって、善行を積むことにスピリチュアリズムは意義を見出しません。確か牧師だったモーゼスは、インペレーターから通信を受け始めた当初、スピリチュアリズムの考え方では、永遠の地獄という脅しが使えず悪行への歯止めが効かなくなるのではと心配していましたね。しかし、スピリチュアリストは、そんな心配はしません(よね?)。 

 ただ、カルデック自身が書いているように、それでも『天国と地獄』で描かれる地獄や罰は、当時のキリスト教において支配的だった地獄観や神罰観に比べたら、はるかに合理的で慈悲深いものだったのでしょう(何せ自分の反省と努力次第で何度でもいつでもやり直しがきくのですから)。カルデックとしても、当時の地獄や罰の観念を引き継ぎながら、その質の転換を図ろうとしていたのかもしれませんね。

 『天国と地獄Ⅱ』には、「アラン・カルデック自伝」という貴重な文献も収録されています。こちらも大変興味深いものですので、次回、紹介したいと思います。

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