カルマの法則

2010年8月 6日 (金)

こぼれ話~インペレーター流「カルマの法則」

 先日、「カルマの法則なんて忘れよう!」という記事で、「カルマの法則」は、とても誤解されやすい言葉だと書きました。その繰り返しで蛇足になるかもしれませんが・・・。

 「悪因悪果」「善因善果」とも表現される「カルマの法則」は、ついつい、良い行いをすれば、何か楽しいことやうれしいことが訪れる、あるいは、来世では恵まれた境遇のもとに生まれることができるなどと誤解されがちです。また、悪行を重ねているといずれ貧困や病や悲惨な運命が待っている、とか、逆に、現在、悲惨な状況にあるのは前世で相当悪いことをしたに違いないとか・・・。しかし、これはあまりにも物質的価値観にとらわれた発想ですよね。

 前回の記事で触れたステイトン・モーゼスの『霊訓』でも、カルマとの言葉は使われていませんが、この法則について述べられています。通信霊団の代表であるインペレーターが、「われらは宗教なるものを、より単純な形で関わるものとして説く」と前置きしたうえで、その根幹となる思想として、次のように述べます。(そして、続けて、それに比べたときのキリスト教神学の教義の非合理性を厳しく批判していきます)

 修行場としての地上生活の中に置かれた人間は果たすべき単純なる義務が与えられ、それを果たすことによりて一層高度な進歩的仕事への準備を整える。その間、不変の摂理によって支配される。その摂理は、もし犯せば不幸と損失をもたらし、もし遵守すれば進歩と充足感を与えてくれる。(『霊訓(上)』八節)

 また、背後霊の指導に触れつつ次のようにも述べます。

 正しき行為の選択には背後霊の指示もあるが、本来は霊的本能によりて知ることが出来るものである。為すべきことを為していれば進歩と幸福が訪れる。魂が成長して完成へ向けてより新しく、より充実せる視野が開け、喜びと安らぎをもたらす。(『霊訓(上)』八節)

 インペレーターは、善行の結果もたらされるのは、快楽や幸運や物質的に豊かな境遇などではなく、「進歩と充足感」や「魂が成長して完成へ向けてより新しく、より充実せる視野が開け」ていくことだと言ってるわけですね。

 さすがインペレーターと評価しますか?それとも、そんなつまらないことのために善行を積み重ねても仕方がない、「カルマの法則」とはケチな法則だと思いますか?(笑)

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2010年6月24日 (木)

「カルマの法則」なんて忘れよう!

 スピリチュアリズムやニュー・エイジの世界では、よく「カルマの法則」という言葉が使われます(サンスクリットからの借用です)。この法則について、私が当初理解していたのは、この世だけ見れば、善良な人たちが悲惨な人生を送っていたり、「憎まれっ子、世にはばかる」みたいな状況があるとしても、前世や死後の世界、来世まで視野を広げれば、実は「善因善果」「悪因悪果」が成立していて、神の完璧な公正性が実現しているというものでした。そして、とても意義のある考え方だと信じていました。

 例えば、英国スピリチュアリスト連盟の七大綱領のひとつでは、「地上で行ったことは、死後、善悪それぞれに報いがある」と表現されています(近藤千雄さんの紹介による)。また、七大綱領をわかりやすくアレンジしたという江原啓之さんの「八つの法則」でも採用されていて(「因果の法則」or「カルマの法則」)、「自分がしたことは、いつか自分に返ってくる」などと説明されています。

 こういった「法則」は、ひょっとしたら本当に正しく、完璧に機能しているのかもしれません。しかし私たちには実証しようがなく、信じるしかありません。そして、一番の問題は、この法則が数々の誤解や曲解を生んでしまうことだと思います。

 身近な家族も友人もことごとく残虐に殺されてしまった人がいるとしましょう。そして、退行催眠やミディアムによる前世リーディングなどによって、その人は前世では多くの人を殺した殺人鬼だったことがわかったとします(本当に退行催眠やリーディングで前世がわかるのかどうかについてはとりあえず措きます)。

 「カルマの法則」について、次のような3通りの解釈を思いつきます。

1 前世で多くの人を残酷に殺したカルマゆえに、その報いとして、自動的に法則が作動し、今生では身近な人たちが殺されるという苦しみを味わうこととなった。
2 人は加害者の立場も被害者の立場も等しく味わうようにできている。金持ちも貧乏も、快楽も苦痛も同じ。全ては不公平なく味わうようにできている。したがって、前世で加害者だった人は、今生で被害者の立場となった。
3 殺人鬼はあの世で考えた。自分の人生のどこが間違っていたのか、何が足りなかったのか。そして、身内が殺される立場の苦痛を徹底的に味わうことが、自分の成長にとっては必要だと考え、そのような人生を選んだ。

 すでにお気づきと思いますが、私は、3の考え方に最も説得力を感じ、共感します。

 1は、旧約聖書の「裁きの神」や仏教説話の「閻魔大王」を、「法則」などという近代的用語に置き換えただけのように思います。

 2のような法則が、神の完璧な公正性の現れなのだとしたら、神とは、やけに物質的価値観にとらわれたお方ですね、などと言いたくなります。スピリチュアリズムとは、スピリチュアルな観点でこの世を見つめる考え方のはずです。その観点に立てば、金持ちや快楽が必ずしも幸福とは考えません。また、貧乏や苦痛にも、前向きで積極的な意義を見出します。むしろ、自分自身の魂の成長のために志願して味わっているのかもしれません。それなのに、前回は加害者だったから今回は被害者などと「法則」が機械的に決めているとしたら、大きなお世話ですと言いたいところです。私は、一人一人の魂は、もっと自由意思が尊重されている存在だと思います。

 「カルマの法則」のもっとも俗的で危険な解釈は、おそらく1でしょう。古くからの迷信でよくある「障害者は前世で何か悪いことをしたにちがいない」という見方が代表的です。3の考え方では、障害者は、より大きなチャレンジがしたくて、そのような運命を選んだと解釈します。障害をもつという苦しみを味わうためかもしれません。障害者全体の状況を改善するための働きをしたいという使命感からかもしれません。

 多様な展開があり得るのも3の考え方の特徴です。前世が殺人鬼だったからと言って、今生で被害者にまわるのは必然ではありません。もう一度、同じ境遇にチャレンジして、今度は殺人鬼にならないようにがんばるという選択もあるでしょう。そして、一度は、また悪の道に堕ちたけれど、後半生では深く反省し、今回はこの世にいるうちに目覚めることができたというような人生もあるかもしれません。

 そして、3の考え方であれば、もはや「カルマの法則」などと呼ぶ必要はないのではないでしょうか。究極的には因果律に支配されているとしても、です。

 「情けは人のためならず」という日本のことわざがあります。他者に情けをかけるのは決して他者のためではなく、まわりまわって自分のためになるというのが本来の意味だといいます。そして、これはかなりの程度真実だと体験的に思います。しかし、それはAさんに親切にしたから、翌日Aさんから親切にしてもらえるというような単純なものではありません。もっともっと多様で複雑な因果関係があって、しかし、長い間人生を生きていると、確かにそうだよなあと思えるようなものです。

 「カルマの法則」もそういうものだと思います。けれど、きっとそういう説明を百万回繰り返しても、「カルマの法則」はそのようには理解されないのではないでしょうか。

 そうであるならば、「カルマの法則」などという言葉は忘れてしまった方がいいと思います。多様で複雑な因果関係としての「カルマの法則」は、多くの人生経験を積んでいくことによって、実感として悟っていくものだと思います。

*カルマについてもっと緻密で専門的な議論を読みたい方は、こちらへ

スピリチュアリズム・ブログ「カルマについての試論」

http://blog.goo.ne.jp/tslabo/e/4f87112b5b07212dd2d6157cf3a74cc7

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