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2011年12月25日 (日)

大田俊寛著『オウム真理教の精神史』を読んで~異質だけれど近いもの

 オウム真理教事件の一連の刑事裁判が終結しました。この事件はスピリチュアリズムを含む精神世界にも大打撃を与えたと言われています。

 事件が世間を騒がせていた1995年頃、今は亡き私の父が「お前もあの集団のなかにいてもおかしくはないな」と、からかうように言ったのを覚えています。宗教だのスピリチュアルだのというものが大嫌いな父でした。息子が宗教的なものに関心をもっているらしいことを苦々しく思っていたのでしょうね。

 しかし、私にとっては実はオウム真理教はほとんど関心の外にありました。空中浮揚などをアピールする超能力志向には違和感があったからでしょう。当時、論争相手と言われていた幸福の科学の方が、まだスピリチュアリズムと重なる部分もあり、少し関心をもっていたぐらいです(両教団は、「朝まで生テレビ」で直接対決もしていたのですよ。何と麻原氏本人が出席していました。特別の椅子を用意してもらいながら・・・)

 大田俊寛著『オウム真理教の精神史 ロマン主義・全体主義・原理主義』を読みました。精神世界に関心がある者にとっては、たまらなく面白く、かつ、ためになり、しかもとてもレベルの高い研究書だと思いました。著者は1974年生まれの新進気鋭の宗教学者です。この新進気鋭の学者は、これまで社会学者や宗教学者によってなされてきたオウム研究を手厳しく批判します。そして、宗教学者の責務という自負を持ちながら、オウム真理教の思想と行動の成り立ちについて詳細に分析していきます。

 その分析の結論は、サブタイトルに示されているとおりです。近代において、「人間の理性」を基礎的な原理に据える「啓蒙主義」に対抗して現れた「ロマン主義」、近代的な群衆社会の中から生まれた「全体主義」、聖書に記された終末論を文字通りに信じる「原理主義」の3つです。

 これらの思想と行動を歴史的に跡付けていくと、そこにもここにもオウム真理教とそっくりのものが現れていることがわかります。そして、オウム真理教は仏教系教団を名乗ってはいたけれど、その思想の源泉は仏典などではなく、これらロマン主義・全体主義・原理主義の思想をチャンポンのように取り込んでいったオカルト系の諸思想であることが明らかにされていきます。見事な分析だと私は思います。

 そういえば、私がオウム真理教の存在をなんとなく知っていたのは、学生の頃『ムー』や『トワイライトゾーン』といういわゆるオカルト系雑誌を読んでいた時期があり、そこで目にしたからではないかと思います。(オウム真理教自身が、これらの雑誌から学んだのではないかと言われています)

 ロマン主義・全体主義・原理主義・・・これらの詳しい内容は、著者の手際よい解説に任せるとして、私はその説明を読んでいると、現代の精神世界のそこにもここにもオウムにとても近いものが潜んでいるように思いました。

 スピリチュアリズムはどうなんだという突っ込みもあるかもしれません。私は、シルバーバーチに代表される近代スピリチュアリズムは、似て非なるもの、異質なものだと思っています。著者の主義の分類で行くと、どちらかと言うと合理性や科学性を重んじる「啓蒙主義」の方に近いのではないかとさえ思います。

 ただ、だから安心とは言えません。例えば、(軽薄スピリチュアルとは一線を画する)硬派スピリチュアリストから高い評価を聞くことが多い葦原瑞穂著『黎明』などは、シルバーバーチの引用などもありますが、上で触れられているような諸主義の世界、オカルト系知識などを集大成したという感があり、その幅広い知識と知的水準の高さには感心しますが、正直言って共感できませんでした。少し危険な香りもします。

 まもなく2012年ですね(笑)。最近の精神世界で騒がれているアセンションなどは、上で言うところの原理主義による終末論の、一体何回目の焼き直し?というところでしょうか(笑)。

 笑ってばかりもいられません。スピリチュアリズムに関わっていると、そこにもここにもオウム的な落とし穴があるということなのだと思います。私は異質なものだと思っていますが、それでも近いところにあるのは確かなのでしょう。スピリチュアリストとして心しなければいけませんね。

 2012年を楽しみに待ちましょう。

 皆様、よいお年を!

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