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2011年8月15日 (月)

自己完成が先か他者救済が先か

 自己完成が先か、他者救済が先か・・・これは求道者に常に付きまとう問いかもしれません。特に仏教の世界ではよく問題になります。そしてこういう問題設定をした時点で、私の性格を見抜いている方は、もう答えを予期されているかもしれません(苦笑)。そうです、一般的な(どんな場合にもあてはまるという意味で)答えなどないはずです。

 アニメ・ベイブレードの準主役、つっぱり野郎の盾神キョウヤ風に言うと、「どっちが先かなどとガタガタぬかしてんじゃねえ!てめえができることをさっさとやりやがれ!」という感じでしょうか(すみません子供と一緒に毎週観ているもので・・・)。

 テーラワーダ仏教(原始仏典に忠実な南伝系仏教)の思想や修行法に触れてみたとき、とても完成度が高いもののようにも感じましたが、大乗仏教側から自分の救済のみを追求する小さな乗り物(小乗仏教)と揶揄されたのもわかるような気がしました。逆に他者救済をやたらと強調する仏教やキリスト教の慈善事業の取り組みを見ていて、それよりも前に自分自身のことや足元を見つめてみたらどうかと言いたくなるときもありますよね。

 話は少し飛びます。学生時代にボランティア活動について、自分のためか他者のためかが議論になったことがあります。これも似たところのある議論で、やはりどちらかが正解なんてありえませんよね。現代の(20年以上前ですが一応現代です・・・)若者なので、「世のため人のため」などと真顔で言う人はまずいません。「自分のため」という意見の方が主流だったような気がします。

 この「自分のため」というのにはいろんな意味があります。まず、他者のためにやっているという傲慢さを抑え、謙虚さを失わないようにするという効果もあるでしょう。「他者のため」と言うと、偽善者呼ばわりされたり、本当に役に立っているのかと責任を追及されたりするので、それを回避する、つまり「逃げ」の趣旨もあったかもしれません。そして、本当に文字通り、自己の成長のためにやるのだという意味もあったことでしょう。

 逆に「自分のため」という言葉が第三者から否定的な意味合いで語られる場合もあります。自己満足のため、自分の名誉欲のため・・・。社会的な活動に対して、結局は「自分探し」をしているにすぎないという辛辣なコメントなどもそうですね。阪神大震災の直後に若者がドッとボランティア活動に押し寄せたとき、彼らが自分の地域の福祉の現場などには行きたがらない現実を指摘して、「彼らは他者の役に立ちたいのではない、ただ終末感漂う廃墟に立ちたいだけだ」と分析した学者もいました。こうした批判の裏には、ボランティア活動は「他者のため」であるべきという考えが見え隠れします。

・「他者のため、他者のため」と舞い上がらずに、足元をみて「自分のため」にやってるのだと思って取り組みなさい。
・自分のことばかり考えずに、やる以上、相手の立場に立って、相手の役に立つことをきちんとやりなさい。

 私は、どちらの意見も、TPOに応じて必要な、正しい意見だと思います。(余談ですが、シルバーバーチは「奉仕」を強調しますが、だからと言って、「奉仕しなきゃ、奉仕しなきゃ」と慌てふためいている人を目にしたら、やっぱり首をかしげますよね)

 そして、このTPOに応じてという言葉を、仏教の伝統的用語で言うと「対機説法」になります。私は、仏教の理論化・難解化の歴史にはとても否定的ですが、ブッダについては、とても思慮深く、しっかりと具体的現実に向き合っていた、すごい人だったのではないかなあと思っています。

 おそらく、自己完成の営みの中に他者救済の要素も入ってくるでしょうし、他者救済の努力の中から自己の成長も生まれてくることでしょう。そして相手と場合に応じて、自己を強調したり他者を強調したりしないといけないことでしょう。多少皮肉っぽく言うと、そもそも仏教の無我や空といった理論では、自己と他者の区別も相対的なものに過ぎなかったんじゃないですか?だったら、自己完成が先か、他者救済が先かという問いもナンセンスなはずですよね?

 おっと、少し理屈が過ぎました。もっと素直に言うと、自己完成と他者救済は車の両輪みたいなものではないでしょうか。常に両方を回さないと進めないし、相互に力を貸しあっている関係にある、という風に。

 自己完成と他者救済、どちらが大事ですか、とブッダに尋ねたら、なんとなく答えが想像できそうな気もするのですが・・・。

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